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カニ女


閻魔大王

ハウパーヴィラ


写真上:シンガポールの古き良き時代のプラナカンスタイルの装飾。今現在はパブ。
写真中上:シンガポールの地獄庭園ハウパーヴィラというところのコンクリート人形。カニ女
写真中下:ハウパーヴィラの地獄を再現したジオラマ
写真下:ハウパーヴィラの…どういう物語を再現したものかは忘れた。
※単にシンガポールの写真というだけで本文との関係はなし。




私は昔シンガポールで日本語教師をやっていた。

 

ネットを見ていると大学生や中高年も「日本語教師になりたいんですけど」というコメントを時々見かける。国際交流もできそうだし楽しそうというイメージがあるのだろうか。

実際楽しいことも結構あったし日本の会社で残業をエンドレスにやり続けているよりか全然マシだとは思う……。しかし、大変なこともあった。

 

さて、では何が大変だったか?と言うと第一に「教師も人気商売だ」ということだ。

 

これは私が所属していた学校のシステムに起因する。その学校では生徒が自分の好きな教師のクラスを選べるシステムだった。こういうシステムでどういう現象が起こるかと言うと人気のある教師のクラスには生徒が制限人数一杯になるまで登録されるが人気のない教師の場合はクラスの最低人数を下回ってしまい……あげくに中止。なかなかシビアな世界だった。

 

そして第二に上司が今時の日本では絶滅危惧種のような保守派精神論ババアだった。このババアを私はシーラカンス・ババアと名付けていた。 

例えば日系ブラジル人社会などに既に本国では消えてしまった文化が綺麗に残っている場合があると聞くが、このババアも経済成長前のシンガポールに根付いて変化し続ける日本の文化からは隔絶されなぜか悪しき伝統だけを結晶化させた。
 

こいつが人気のない教師と人気があっても自分が気に入らない教師をヒステリックにありとあらゆる嫌がらせでトコトン追い詰めて自主退職させた。とにかく教師は常時入れ替わる。
私は人気がなかったので前者だった。ノルマの果たせない営業部のサラリーマンみたいなものだ。また別の女性教師は人気があってもババアが生理的に受け付けないらしく戦時中に因習だらけの田舎に嫁いだ若嫁のようにいびり倒される。

 

ゆえに教師は必死である。ただ単に生真面目に淡々と教えていても生徒に飽きられるので、授業を楽しませるために生徒を笑わせるギャグの一つぐらい言えなければならない。さらにクラスメイト同士の交流を活性化させるために率先して食事会だとかボーリング、カラオケなどを企画してプライベートな時間を割いて生徒との交流に当てる教師も多かった。そうやってクラスメイトが仲良くなると落ちこぼれる生徒が減るのだ。

 

私はなぜ人気がなかったかといえば今思い起こせば色々欠点が思いつくが変に硬かったのだと思う。
ある日、受付カウンターでこれからクラス登録する生徒が自分の事務員と話していた。
「この先生はどんな感じ?」と事務員に聞く。
She is funny.
「じゃあこの先生は?」事務員は少し複雑な顔をして、He is serious.
って誰のこと話してんだ?と思いきゃ俺のクラス。
シリアスって俺かよ?
「シリアスは嫌だな。じゃあこの先生」と生徒。
おいおい事務員、勘弁しろよ。これじゃあ誰もクラスに登録しないに決まってんじゃん。

クラスの登録人数が足りずに中止になり私はババアに説教された。
「シンガポール人はね。面白い先生が好きなのよ。もっと笑わせなさい!」とのことだった。
それを女性の同僚にこぼしたら
「教師はホステスとかホストじゃないですよね! 
M先生(ババア)は間違っています!」
などと憤慨する……。

 

私は一瞬泣けてきそうになったが、考えてみると彼女はこの学校で人気ナンバーワンの教師で生徒の登録人数なぞ悩む必要もないしババアにも好かれていて文句は言われない。

やはり人気ナンバーワンになるだけあって、どんな状況でも共感力抜群である。